なぜ1300年以上受け継がれるのか。伊勢で学んだ「受け継ぐ」ということ

公開日:2026/08/09(日) 更新日:2026/08/09(日) スタッフブログ

弊社では、無垢材を使用した木造軸組構法による家づくりを行っています。
そのため、昔から木を大切にしてきた伊勢神宮には以前から興味がありました。

「木」や「文化」が長い年月受け継がれてきた理由を、自分の目で見て学びたい。

そんな思いから、知り合いの方の紹介で御木曳行事に参加させていただきました。

伊勢神宮では、約20年に一度、社殿を新しく建て替える「式年遷宮」が1300年以上続けられています。
初めて知った時、私は「なぜ歴史ある建物を修繕するのではなく、建て替えるのだろう」と疑問に感じました。

その理由を知る中で、式年遷宮には、建物を残すことだけではない大切な意味があることを知りました。
建築技術や文化、そこに込められた想いを、次の世代へ受け継いでいくための営みでもあるのです。

20年に一度しか行われない特別な行事に、自分が実際に参加できることへの期待。
その一方で、初めての場所、初めてお会いする方々の中に入っていくことには、少し戸惑いもありました。

しかし、いざ五十鈴川へ入ると、足はあっという間に藻だらけに。
最初は足元への不安や緊張もありましたが、実際に川へ入り、御用材を囲んで動く中で、「見る側」ではなく「参加する側」になったのだと実感しました。
そして、実際に体験してみると、大きな木を動かすために大切なのは、力だけではないことに気づきました。

川の流れや足元の状況を感じながら声を掛け合い、「エイサー」の掛け声に合わせて歩幅をそろえる。
初めてお会いする方ばかりでしたが、自然と動きを合わせる中で、
自分自身も少しずつその輪の一員になっていくような感覚がありました。

午後になると足元は砂利から岩場へ変わり、歩きやすくなった反面、滑りやすくなりました。
自然と「気を付けて」と声を掛け合い、お互いを気遣いながら進んでいきます。

陸へ上がってからも、カーブのある場所では「ゆっくり20年に一度の行事を味わいましょう」といった声が掛けられ、その内容を参加者同士で伝え合いながら進みました。
一人ひとりが周囲を思いやり、それぞれの役割を果たすことで、初めて出会った人同士でも一つの方向へ進むことができる。
御木曳を通して、そんな人と人とのつながりが、一つの行事を支えていることを実感しました。

午後には敬宮愛子内親王殿下が御木曳に参加される予定があり、通常とは異なる警備体制となっていました。
待機中には神宮の方が「交代で日陰で休んでください」と参加者の体調を気遣い、警察の方は安全確保のために人の流れを整理されていました。

それぞれ立場や役割は違っていても、「無事に御用材を運ぶ」という同じ目的に向かって動いている姿が印象に残っています。
一つの行事を支えるそれぞれの姿を見て、受け継がれているのは知識や技術だけではなく、
人と人とのつながりや、その場に流れる空気もまた受け継がれているのだと感じました。

行事が終わった後、ホテルへ戻った父が、同じ法被を着た方を見かけると自然と「お疲れ様でした」と声を掛けていました。
その後、「なんだか仲間のような感じがする」と話していたことも印象に残っています。

初めて出会った人でも、御用材を共に曳くという経験を通して、自然と心の距離が近づいていく。
それもまた、御木曳という行事が長く受け継がれてきた理由の一つなのかもしれません。

 

伊勢神宮で見つけた「目立たない工夫」

伊勢神宮の建物を見学する中で、特に印象に残ったのは、目立たない部分にまで細かな工夫が施されていたことです。
普段何気なく歩いている場所にも、建物を長く保つための工夫が隠されていました。

内宮では、階段の端や五十鈴川へ続く部分に、水が適切に流れるよう石で見切りがされ、さらに勾配も設けられていました。
見た目の美しさだけではなく、雨水や周囲の環境まで考えられていることに気づきました。

 

また、宇治橋にある擬宝珠には、長い年月の中で多くの人が触れてきた跡が残っていました。
よく触れられている部分には色の変化が見られ、新しくきれいな状態を保つことだけではなく、
多くの人に大切に使われ、時間を重ねることで生まれる価値もあるのだと感じました。

外宮の授与所では、正面から見える位置にある縦樋をそのまま見せるのではなく、化粧柱の位置に合わせ、
腰部分を木材で仕上げることで建物の一部として美しく見せる工夫もありました。
さらに、縦樋から流れる雨水を受ける犬走りにも、水が溜まらないような細かな工夫が施されていました。

  

屋根にも「すぐ」「むくり」「そり」といった異なる形状が使われ、それぞれの建物の特徴や美しさを引き出しています。
こうした、目立たない部分まで考えられた工夫の積み重ねもまた、建物を長く守るために欠かせないものなのだと感じました。

 

「受け継ぐ」とは、形を残すことだけではない

伊勢では、昔から受け継がれてきた建築や文化、伝統が、特別なものとして切り離されるのではなく、街の日常の中に自然と溶け込んでいました。
八朔参宮のような行事も、人々の暮らしの中で受け継がれ、無理なく次の世代へ伝えられています。
また今回、御木曳行事についてお話を伺う中で、携帯電話を活用した記録や発信など、文化を未来へ伝えるために新しい方法も取り入れられていることを知りました。
「受け継ぐ」とは、ただ古いものや形を残すことではなく、大切な想いや意味を未来へ届けるために、その時代に合った方法を考え続けることなのだと感じました。

 

私たちの家づくりにもつながること

 

私が普段携わっている家づくりでも、一棟の家が完成するまでには、多くの人の技術や想いが積み重なっています。
しかし、その背景にある職人の技術や、家が完成するまでに関わる多くの人の想いは、完成した家を見るだけではなかなか感じることができません。
だからこそ、実際に見て、触れて、感じる経験が大切なのだと思います。

 

家づくりにおいても、図面や写真だけでは伝わらない素材の質感や、実際に暮らした時の心地よさがあります。
弊社では、実際の暮らしを体験していただく機会として「展示場体感宿泊」を開催しています。
家の中にも、視点を変えて見てみることで、たくさんの発見があります。
8月は夏休みの自由研究として、家の中にある発見を探しながら、ご家族で楽しんでいただける体験もご用意しています。
また、展示場では25年という年月を重ねた自然素材、特に無垢材ならではの経年変化や味わいも実際にご体感いただけます。
新築時だけでは分からない、時を重ねることで深まる住まいの魅力を、ぜひ感じてみてください。

弊社でも、家を建てて終わりではなく、定期点検やメンテナンスを通じて、長く住み継いでいただける住まいづくりを大切にしています。
伊勢で学んだ「受け継ぐ」という考え方は、私たちの家づくりにもつながっているのだと感じました。
今回の経験を通して、家づくりとは、家を建てることだけではなく、人から人へ想いや技術、そして暮らしを受け継いでいく営みなのだと改めて実感しました。
最後に、今回この活動を行うにあたり、たくさんの方々にご協力いただき、御木曳行事を経験することができました。
そして、このブログを通して、その経験を皆さまにお伝えできることを心より感謝申し上げます。

体験レポート 設計部 相場

当日の様子を動画でもご紹介しております。

 

 

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